「みやぎ農業見聞のつどい・夏」を開催しました

新規就農に必要なことは、「自分をアピールすること」と「自分スタイルの具体化」

~新規就農を目指し新規就農希望者ら17名が、先輩農業者を訪問~

 

 去る6月30日(土)に当公社と宮城県、県農業会議、JA宮城中央会の共催による「みやぎ農業見聞のつどい・夏」が開催されました。
 就農を希望する男女17名(男性15名・女性2名)が参加し、先輩農業者のほ場を訪れ、視察研修や意見交換を行いました。参加者は、20代が2名、30代が9名、40代が2名、50代が4名で、県外からも5名の参加がありました。
 開催状況の一部をご紹介しますので、是非、就農ビジョンやイメージの具体化とともに、計画検討の参考として下さい。

 
 
◎視察園1 仙台市太白区 くまっこ農園 渡辺 重貴 氏  視察園概要は → こちら
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~就農から現在まで~
 海外で農業指導のNGO活動に関わり、帰国し、会社勤務をしたが、農業への想いが強かったため、家族の反対を押し切り就農を決意。秋保で2年間研修した後、33歳で就農した。
 農地は、柳や蔦が生い茂っていたため、自分で機械を使って伐根、開墾からのスタートだった。当初から土が良いのか、農作物の出来は良かったが、1年目は猿により全滅など、鳥獣被害の多いところである。現在は、電柵とワイヤーメッシュの組み合わせで防御している。
 就農してからも2年間は、朝、新聞配達をしていた。3年目からようやく農業だけで食べていけるようになった。
 

 
~栽培について~ 
 農薬・化学肥料を一切使わずに栽培している。最初に国際協力で訪れたインドネシアには、トラクターや農薬はなかったため、現地にあるものだけで、農業を行わざるを得なかった。また、自分が食べて美味しいと思ったため、自然と有機農業となった。
 現在、雇用1名、研修生1名の3人で作業している。始めた頃から多品目(現在は年間80品目位)栽培のため、機械化できない。マルチも使っているが、草取りにかける労力は大きい。
 これから夏本番を迎え、ナスやキュウリの収穫など一年で最も忙しい季節となる。嬉しいながらも休みが取れず、体がきつい時期。ひとりでやっていた頃は、2ヶ月休みが取れなかったこともあった。畑の目安規模として、ひとりなら1町歩できるかどうか。仕事としては50a以上必要。
 今年三作目のキャベツは、虫にやられて、一番見栄えの悪い状態であるが、中は虫に食われてない。虫に食われても8~9割は収穫できる。これも有機のすごいところだと思う。
~販売について~  
 会員への宅配が半分を占める。飽きられないように1年を通じて8~10品のおまかせセットで販売している。冬場の品数が少ないときでも最低8品。有機農業より、年間絶やさず作って届けることのほうが難しい。他には、JAや生協、自然食直売店などに販売。
 栽培品種も経営スタイルによって変わる…例えばキュウリ、イボイボで皮が薄くて美味しいが、日持ちがしない品種(四葉系キュウリ)…店舗には出回らない…を栽培…他との差別化を図り、お客様の満足度を上げることが大事。販売も含めて農業なので、就農年齢は関係なく、会社員など農業以外の経験があったほうが、就農には良いと思う。
 
 *研修生から一言*

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 研修を始めて3ヶ月。その日の作業の意味を教えてもらってから、作業を行うので、毎日がとても充実している。農業は感覚が大事。その感覚をつかむことを意識して研修に励みたい。
 

 
~就農に向けて~
 まずは自分を売り込むところから。忙しいときも挨拶だけでなく、地域のおばあちゃんと世間話をすることも大事。いかに地域に溶け込めるかが重要…地域に認められることが就農につながる。
    
◎視察園2 仙台市太白区 (株)ベジランド佐藤 佐藤 純 氏  視察園概要は → こちら
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~法人化について~
 トマトを中心に小松菜やキュウリ等を周年で栽培。農家として10代目。4年前、両親から、長男である純氏と次男の三千仁氏に代替わりのとき、宮城県担い手育成総合支援協議会の専門家派遣を活用し、経営の拡大、発展を目指して法人化した。給与等の課題がクリアになり、融資等のメリットもあって、経営の安定につながっている。
 現在、作業人員20名(うち正社員は2名、あとは、役員とパート)で作業を行っている。
 40年以上に渡って、みやぎ生協と取引しており「めぐみ野」ブランドで出荷しているが、使える農薬が決まっている等、基準は厳しい。トマトについては、都市型の優位性で赤く色づいた物だけ収穫し、完熟出荷を行っている。経営者になって、高級野菜を作るより、身近にいる消費者に向けての野菜栽培で「地域の人に食べてもらいたい」と思うようになった。
~栽培について~
 ハウス、畑それぞれ1ha。今年1月にハウスに植えた桃太郎トマトもあと1週間で収穫終了となる。重油の高騰でハウスのカーテンを2枚から3枚に変更する等、コストはかかるが、夏の実焼け防止にも効果的。作業効率を考え、手の届く範囲(11~12段)で栽培している。ハウスは、トマトと他の野菜を使い分けている。受粉は外来種のマルハナバチを使用し、逃げないための対策も必要。街の中での農業のため、暖房の音がうるさいと苦情が出たこともある。
 ハウスは天候の影響が少なく、生産計画をデザインできる。
味が良いと言われて、土耕栽培にこだわってきたが、土は水はけの差があって均一化しづらい。水耕栽培も美味しくなり、生産現場でのコントロールがしやすいため、将来的には検討もあり得る。
~販売について~ 
 就農当時は、農家と販売店舗で意見の対立もあり、買わない客が悪いという時期もあった。が、今は違う。買ってもらえるものを作らなければならない。露地栽培を増やしたのは、直売コーナーの品数を増やし、消費者に飽きられないようにするためである。
 母の希望で自宅を改築し開店した農家レストラン「柳生旬彩ひだまり」は、予約なしでは入れないほどの人気である。店舗内で生産物の販売も行っていて、アンテナショップとしての役割も果たしている。
 
 *次男の三千仁氏から一言*

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~就農から現在まで~ サラリーマンの時代、その給料から10年後を考え、やり方次第で「儲かる農業」に興味を持ち、就農した。毎日食べたいと思える美味しい野菜を栽培することが大事。また、毎日買ってもらうためには、安価でなくてはならない。リピーターを大事にして、味と価格にこだわりながら、儲けを追求し、規模拡大につなげていきたい。
 

 
~販売について~
 今後は農地が余ってくるので、農業は面白い商売になると思う。始めるにあたっては、法人で研修を受けることを奨めたい。研修受け入れも予定している。ただし、自分がどんな農業をしたいのか、目標を持っていないと身に付かない。
 
◎ゲスト 川崎町 佐藤 大史 氏  概要は → こちら
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~農業への考え方~
 就農して3年目。やりたいことだけをやりたいと自然栽培に挑戦している。無農薬、無肥料での栽培を試みたが、キャベツや白菜が結球せずに失敗。施肥は行う栽培にする。
 会員への宅配をベースに販売を行っているほか「いまここちった」の名前で、川崎町の廃校になった小学校で、6月~11月の毎月第3日曜日にオーガニックマーケットを主催・開催している。夫婦一緒にライフスタイルを通してのオーガニックを考えている。目指すは「百姓」である。
 どのような生活をして、それにはいくら必要かを逆算して、その土地や地域にあった農業スタイルを決めることが大事。キュウリも漬け物として売れば高く売れる…有機に限らずやり方次第だと思う。
 
~農地について~
 農地がないから就農できないと聞くが、そんなことはない。田舎に住もうと思えば、農地はいくらでもある。必要なのは「覚悟」である。
とにかく地域に溶け込むことが大事。地域の人から頼まれ事を受けることも度々であるが、田舎に住むというのはそういうことだと思う。田舎に住んで欲しい。
 移住促進!田舎に住む気があれば、町も地域の人も過疎化が救えると応援してくれる。
 
◎視察園3 大衡村 國府 雄人 氏  視察園概要は → こちら
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~研修から就農まで~
 自宅から約30分の通勤農業。就農5年目。農業は儲かると思い就農。最初に紹介をしてもらった研修先は、自分のやりたい農業ではなかった。妥協しては、時間の無駄になると考え、多品目野菜の農家に研修先を変更して、レタスやトマトなどの栽培と経営の勉強をした。
 研修先が仙台市六郷だったため、その周辺を中心に農地を探し回った。しかし、条件の良い農地はすぐに決まってしまう。また、都市部の賃料は高い。結局、父の伝手で大衡村で60aのまとまった農地を借りることができた。研修先と土や気候など、条件の違う場所での栽培は難しく、慣れるまでに1~2年かかった。
 
 
~栽培について~ 
 露地と施設で多品目の野菜を大きさの均一化など「見た目」を重視し、栽培している。「味」については、翌年も同じものを出せるかというと、まだ自信がない。
 これ以上、販売単価を上げることが出来ないため、規模拡大やハウスの増設を視野に入れている。現在、作業はひとりで行っていて、機械化すれば1町歩はできるかもしれない。人の雇用も考えたいが、休憩したり、機械を保管する建物がないため難しい。
 栽培品目について、ネギは管理が楽で新規就農向き。レタスは暑くなると下の部分から傷んでくる。オクラは1日2回収穫もあるが、軽いので重さから考えた収益性は高い。露地で収益を上げるには葉物もお薦め。
 直売所は、地域の農業者が売り切りたいため、安い値段をつける。それと勝負しても仕方ない。販売先を大手スーパーに定め、飛び込みで生産物を持って行ったり、ホームページで募集があったところに売り込みをした。スーパーへの納品は、効率を考え、夕方の帰りがけに置くようにしている。ただし、販売のためにポップをつけてアピールしすぎたりはしない。形の悪い野菜はB品として出荷することもあるが、良品が売れなくなるため、積極的には出荷しない。
~資金について~  
 借り入れ500万+自己資金500万で ビニールハウス3棟の他、トラクター1台、管理機2台など700万位投資した。売上げを上げるため、ハウスは、最初から設置した。
 手元の現金は借入金の額を超えないようにしている。
欲しい所得の3倍を売れば、その所得を得られる。新規就農者の利益率は30%程度。親元就農であれば、機械投資がいらないので50%程度になる。
~就農希望者に一言~
 農地を借りるにも給付金をもらうにも行政への自己PRが重要。計画書の直しなど指導されたことやそれ以外の質問にも答えられるよう、準備することが大事。結局、行政も良い人から農地等を紹介するので、今日、参加している皆さんがライバル。
 
**先輩就農者のお話に共通することは**
 ★ 自分をアピール!
  地域や 行政そして販売先へのアピールが、農地確保や研修先紹介、販路開拓につながる。
  新規就農には「自分をアピールすること!」が求められる。
 ★ スタイルの具体化
  どのような農業がやりたいかを見極め、そのスタイルを具体化させ、自ら行動することが大事。
 
 **参加した皆さんからは・・・**

 ・イメージしていた以上に農業は、大変な仕事だと思えた。様々なタイプの農業者の話を聞くことが出来て、世界が広がった。一方で、ひとりで新規就農することの厳しさも感じた。その現実を踏まえ、自分なりに計画を考えてみたい。
 ・農業のやり方や農法の特徴より、実際に農業をして生きている方々を前にして、その生き様を見ることが出来て良かった。皆さんが活き活きとしていた。改めて就農への意欲が湧いた。
 ・単身で新規就農する際の具体的な規模やスケジュールがイメージできた。
 ・見た事、聞いた事、すべてがとても参考になった。自分の考えている農業のスタイルをもっと突き詰めて、もう一段階具体的な計画を立てたいと思う。

 
 など、先輩就農者のお話しが大きな刺激となったようです。
 今回の「つどい」が、就農への一助となることを願っています。

 
   
お問い合わせ先

担い手育成班 :吉川(よしかわ)
TEL:022-275-9192