「みやぎ農業見聞のつどい・秋」を開催しました

新規就農に必要なのは、「まわりとのつながり」と「挑戦から学ぶこと」

~新規就農を目指し新規就農希望者ら17名が、先輩農業者を訪問~

 

 去る10月28日(土)に当公社と宮城県、県農業会議、JA宮城中央会の共催による「みやぎ農業見聞のつどい・秋」が開催されました。
 就農を希望する男女17名(男性11名・女性6名)が参加し、先輩農業者のほ場を訪れ、視察研修や意見交換を行いました。参加者は、20代が4名、30代が8名、40代が4名、50代が1名で、県外からも1名の参加がありました。
 開催状況の一部をご紹介しますので、是非、就農ビジョンやイメージの具体化とともに、計画検討の参考として下さい。

 
 
◎視察園1 山元町 (株)燦燦園 深沼 陽一 氏  視察園概要は → こちら
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「町を元気にするため法人を立ち上げ、こだわりのいちご栽培」
 こだわったいちごをこだわった場所にこだわったかたちで販売する!
 
~法人設立~
 親元の農園で就農したが、いちごの収穫が冬から春に集中するため、通年の雇用が難しく、家族経営の限界を感じていた。平成23年3月東日本大震災が発生し、津波ですべてを失ったため、農業をやめようと思った。しかし、1000人にのぼるボランティアの方々に助けられ、「東北一番のいちごの町がなくなるのは困る」という声に後押しされ、この年の11月に法人化し、燦燦園を立ち上げた。
 

 

 
~栽培の特徴~ 
 1棟約30aの高設栽培ハウス5棟を所有し、社員とパートの計30人の仲間とともに年間70t~80tのいちごを生産。培地は、ココナッツの皮を粉砕したものに固形肥料をプラスしている。そこに養液をコンピューター管理で流し、排液で養分吸収量を把握している。養液栽培は味が薄い、同じ味になりがちなどの傾向があるため、水道水をフィルターに通した軟水に薄めた酢を加えるなど、水にもこだわって栽培している。農薬は、ゼロとはいかないが、他と比べて3分の1程度まで減らしている。
 年間の収益のバラツキを抑えるため、夏は、パプリカ栽培を行うなどしている。
 また、環境コントロールハウスの導入により、11月~5月に限られていたいちごの出荷が、夏期にも行える見通しとなった。
~販売の特徴~  
 販売には、栽培のこだわりを直接、消費者に伝えることが必要で、‟一次産業”を前面に出すと消費者に喜ばれる。販売の方法に工夫を凝らすとともに、今後、いちごに特化したスイーツショップにも挑戦していきたい。

 
 *4月に就職した社員さんの感想*

 自らがデパートやイベント会場で販売することで、消費者への対応を学ぶことができ、会話の中からお客様が何を欲しがっているかを知ることで、いちごに対する意識が高まった。栽培、販売そして六次化に積極的に関わりたいと考えている。失敗もあったが、周りの温かい指導で安心して働くことができている。 

 
 *会社として*

 非農家出身の社員が多く、様々なスキルが事業に活かされている。雇用の継続には、聞く姿勢が大事と考え、社員の声に耳を傾け、個々の状況を理解しながら、働きやすい職場作りに務めている。求める人材は、挨拶、意欲、元気があり、積極性や疑問を持つ姿勢がある人。また、ひとつの畑をたくさんの人間が囲むため、協調性が大事である。 

 
    
◎視察園2 山元町 内藤ファーム 内藤 靖人 氏  視察園概要は → こちら
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   「震災ボランティアから移住し、新規就農!」
 
~就農まで~
 東京で会社員として働いていたが、東日本大震災の直後からボランティアとして山元町で活動。働き盛りが、線路が流されて通えなくなり、町外に出て行ってしまった状況の中、山元町に若者を呼ぼうと平成25年8月に自らが移住・就農した。
~研 修~
 就農前に研修に行った蔵王は、土が柔らかく根菜がまっすぐ育つ良い土地であったが、借りた農地は真逆だった。山元で独立就農してから、研修先を間違えたことに気がついた。

 
~栽 培~ 
 まったくの農業素人であった。研修期間は、7ヶ月…それも9月~3月の秋冬期間…のみで就農したが、1年目はビギナーズラック?でよく穫れた。甘く見た2年目からは、苦労の連続で露地栽培の雨・風・冷害など、リスクの高さを痛感している。
 現在は、ニンニク~みんなに元気になってもらいたいと最初から作ろうと決めていた~の他、小松菜・万願寺とうがらし・カボチャ・マコモダケなど、ちょっと珍しい作目を選んで栽培している。
~資 金~ 
 まだ、これだ!という状況が作れていないため、融資は受けておらず、無借金である。青年就農給付金(現:農業次世代人材投資事業の経営開始型)は受給している。
 今年から、研修先で一緒だった知人と共同で作業を行っているため、事業拡大も視野にいれている。農地を新たに借りる候補もあるが、自分のやりたい農業や土地の条件、そして何より、土地所有者の理解を得た上で借り受けたいと思い、現在、検討中である。
 農業機械は、中古品を手に入れ、勉強しながら自分で修理して使っている。
~販 路~ 
 他との差別化をはかるため、珍しい野菜や品種を栽培するようにしている。産直市などで、珍しい野菜は注目され販売に有利であること、定番の品目では、ベテランの生産者と並べられると見劣りすることも理由のひとつ。また、定番以外の珍しい野菜の栽培で先駆者になれることは、経験としてプラスと考える。珍しい品種、見慣れない野菜は、まず、消費者に手にとってもらうことが大事。調理方法をチラシやPOPで伝えるなど工夫している。
 販路は、最初は町内のスーパーやJAであったが、最近は、4Hクラブや東京・埼玉の友人などの紹介で、仙台での直売やホテルからの注文につながるなど、販路が広がっている。

 
 失敗もあるが、挑戦が必要!

 雑草を生やし放題にしたらどうなるかと試して、まわりに迷惑をかけたりもしたが、まずやってみることが大事だと思う。知識は大事であるが、経験が必要な時もある。
 ○虫が出てくるタイミングをつかむ → 問題の対処の仕方を抑えておくこと!
 ○露地栽培は自然が相手。うまくいかないことを頭に入れておく!

 
 
◎視察園3 仙台市太白区 庄子農園 庄子さおり 氏  視察園概要は → こちら
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  「親元での研修を経て、家族で共同経営」
 
~就農から現在まで~
 夫婦で親元就農し、3年目に親から、コインロッカー型の自動販売機を提案されたことがきっかけとなり、就農5年目で親から独立した。現在は、家族経営協定を結んで共同経営を行っている。
 ご主人は、機械に詳しく農業機械の整備から、自動販売機周辺の小屋の設置、ハウスに井戸から水を引く配管工事まで行うほど。作付計画や経理はさおりさんが担当。
 宮城県指導農業士であり、農業者の育成に積極的に携わっている。
 

 
~栽培の特徴~
 栽培も販売もトライ&エラーであったが、鮮度にこだわり、年間100種類あまりの少量多品目の野菜を安定的に提供し、「相手を考えた物作り」を大切にしている。
~販売1~
 自動販売機には、当初、2~3種類の野菜しか入れず売れなかったが、種類を増やすことで売れるようになり、駅近くの立地の良さも手伝って、販売は安定している。
 補充は、時間を黒板等で告知することで、その時間を目がけてお客様が集まるようになり、軽トラ市のようになった。
 最初は、作業時間が減るため、お客様との会話の時間がもったいないように思ったが、消費者からの意見やニーズを聞くことができ、生産者からのアナウンス効果もあるため、今は、とても貴重な時間と感じている。
~販売2~
 飲食店舗に対し、配達はせずに取りにきてもらう方式で直売している。半年毎の栽培予定リストで収穫のバージョンを確認してもらう他、毎週、月曜日に収穫予定リストを作成し、フェイスブックなどで送り、注文を受け付けている。変わりだね野菜は、レシピを貼り付けるなど工夫して販売。
 注文側からすると①ひとつの農家で野菜のすべてが揃う②旬の野菜を旬の時期に調達できる③珍しい野菜の要請にも対応してくれる…等、確かな技術と細やかな配慮に店舗からの信頼は厚く、売上げが伸びている。
 飲食店舗に出向いて、お料理をいただきながら、話をすることもある。店舗側が何を必要としているかを聞いて、品種決めや栽培のヒントにしている。
 生産・販売する側のさおりさんにとっては、種類が多いと生育に差が出るため、次の植え付けにタイミング良く、切り替えできないデメリットはあるが、野菜の種のカタログをみて、今度は何を植えようかとニヤニヤ…生産者も楽しむことが大事!とのこと。

 

 就農当時は、まわりの農家さんに失礼があってはいけないと、「軽トラがきたら挨拶!」を実行していたら、工務店の車だとわかり、苦笑いしたことも。
 自宅が住宅地に存するため、近隣の迷惑にならないよう、米の精製や乾燥などの時も機械は、夜8時には止めてトラブルとならないよう気を付けている。

 

**先輩就農者3人の方のお話に共通することは**
 ★ 人とのつながりから生み出される農業

    3人の先輩農業者がともに、まわりの人たち~一緒に働く仲間、お客様、地域の皆さん~とよりよい関係を築くため、三者三様に細やかな気配りをしていた。まわりとの良好なコミュニケーションが、人から人へと繋がって、「つながりから生みだされる農業」があると感じた。

  ★ 経験は財産!
    トライ&エラーで挑戦!失敗も経験のひとつと捉えるポジティブさが必要。
 
 **参加した皆さんからは・・・**
 ・実際に失敗や経験が聞けて良かった。
 ・自分が思っていた以上にチャレンジや挑戦が出来ると感じた。
 ・人とのつながりを作るには、積極性を持つべきと感じた。

 ・農業に対する熱意が伝わり、自分も情熱を持って就農したいと思った。自分に今、何が足りないのか再確認してから就農したい。
 ・大変だけれど、自分がやりたい農業を求めて楽しんでいる印象を受けた。自分はどういう農業をするのか、考えを詰めていきたいと思う。

 
 など、先輩就農者から大いに刺激を受けたようでした。今回の「つどい」が、就農への一助となることを願っています。

 
   
お問い合わせ先

担い手育成班 :吉川(よしかわ)
TEL:022-275-9192