「みやぎ農業見聞のつどい・秋」を開催しました

 
~新規就農を目指し新規就農希望者ら10名が、先輩農業者を訪問
 
 去る、11月12日(土)、当公社と宮城県、県農業会議、JA宮城中央会の共催による「みやぎ農業見聞のつどい・秋」を開催しました。
 新規就農を希望する10名(男7名、女3名)が参加し、先輩農業者のほ場を訪れ、熱心に視察研修や意見交換を行いました。参加者は、10代が1名、20代が2名、30代が5名、40代以上2名の参加がありました。
 開催状況の一部を紹介しますので、是非、あなたの就農計画や農業スタイル検討の参考にして下さい。

   
◎視察園1 南三陸町戸倉地区 星 達哉 さん 
 視察園概要は → こちら
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~品目転換!小松菜で周年栽培へ
・最初の就農は、祖父がしていた「輪菊栽培」の複合経営だった。
 就農3年目で、東日本大震災に遭い、施設や機械を全部流された。営農中断を余儀なくされた。
・自宅も流され、1ヶ月の避難生活の中、地域の仲間と真剣に何度も何度も話し合った結果、1年を通して収穫できる小松菜に決定。一人でも多くの人を雇用したかった。
・震災から1年後、最初は、農協のリース事業で、パイプハウス30棟(75坪/棟)を設置。
 その後、自己資金でさらに30棟を増設(県単事業園芸特産事業導入)。露地も耕作放棄地などを集積し、5haまで拡大してきた。
・南三陸町は、平坦部が少なくハウス建設も傾斜地を切り出して設置している。
 そのため、同じハウス内で土壌の違いがあり、灌水・施肥など細かな管理の調整が必要で苦労している。
 毎日のデータを記録し、次に活かすよう気をつけている。
 土づくりは、地域の有機物を生かすこと。遠方から運ぶとコストも時間もかかることになる。
・販売は、9割がJA経由の契約栽培。収穫は、1日ハウス1棟半ずつの収穫。出荷量は、年間を通じてほぼ一定。
 播種から収穫まで、夏場は30日だが、冬場は90日必要なので、単純に3倍の面積が必要になる。
 播種が1日遅れても、収穫量に影響する。
 1回の欠品も、契約打ち切りにつながるので半量でも必ず納めるようにしている。
・出荷先は、スーパーなどの店舗と病院や学校給食などの業務用と半々。
 用途に応じて、茎がメインや葉がメインと小松菜の品種も異なる。3品種を栽培。
・就農するまでは、マニュアルどおりにできる。と思っていたが、なかなか思い通りにいかない。
 失敗はあたりまえ。大事なのは「くじけない心と同じ失敗をしないよう記録を見て改善すること!」
 
 
   
◎視察園2 南三陸町歌津地区 (株)小野花匠園 小野政道社長
 視察園概要は → こちら
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~農業は、誰でも挑戦できる仕事・自分次第
・就農当時は、輪菊主体の市場出荷だった。
 就農して4年目市場の相場に左右されない安定した販売を目指し「自分で売る・全部売る工夫」を目標に、一部、直売を開始した。
・消費者の立場に立って、「手頃な値段で、長い菊は要らない。」のであれば、短くして、ハウスの回転を上げれば生産量も増
え、単価を抑えられる。」と、栽培体系を見直した。
・直売を開始し、5年。震災に遭遇。我が家は、浸水はあったものの自宅は無事だったため、沿岸部から20名を超える知人が避難して来て、しばらく避難生活が続いた。多くの人が仕事を失い、「自分に何ができるか」を考え、「農業で雇用をしたい!」と決意した。
・雇用のためには、販路の拡大が必要。これまでの実績から新規4店舗を確保すれば1人雇用が可能と試算し、これまで取引のなかった地元地域のコンビニに、「花と線香」の商品提案しながら販促に歩いた。
・40店舗の販路が確保され、震災から11ヶ月で、法人化を果たした。
・農業は、全ての責任は自分自身。創意と工夫で経営を切り開くことが可能な職業である。
・農業をやるかやらないかは、自分自身の考え方次第である。
 
 
 
◎視察園3 南三陸町歌津地区 自然卵農園(株) 大沼清功社長
 視察園概要は → こちら
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~クレープ販売から地鶏の自然卵生産に挑戦
・「自然卵」への想いは、妻のクレープ販売から関心を持つようになり、娘のアレルギー発症からさらに関心が高まった。
・震災で自宅兼加工場が流失。18年勤めた会社も被災し、解雇となった。
 悩んだ末、自然卵生産に取り組む決意をした。
・現実の養鶏経営は、理想とは大きく異なり、経営を開始した1年目は、100羽いた鶏が復興工事の騒音からストレスで、毎日のように死んでしまい、20羽しか残らなかったこともあった。
 以前は、鳩を飼っていた時期もあり、鳥への愛着も大きく、耐え難い現実だった。
・鶏舎を建てる用地を探すときも、従来のゲージ飼いの養鶏のイメージから「悪臭」がするのでは?との警戒から、なかなか用地交渉が進まず、苦労した。
・自然卵は、地元産の食材(米、麦、ワカメ、小エビ、小松菜、ほうれん草、かぼちゃ、果物など)を原料に、自家配合の餌で育てている。
 抗生剤も一切与えないで健康に育てた鳥から生まれた「自然卵」は、甘み・旨味・コクがあり、クレープにすると驚くほど、膨らみます。地域のたくさんの人の協力で、食材を確保している。
・研修先の北海道では、消費者への認知が広がっていたが、地元では、まだまだ認知されず、自分のこだわりが、周囲から理解されなかったのが、辛かった。ひとりひとり説明しながらの販売だった。
・ようやくクレープを食べていただいたお客様から、口コミで買いに来る方が増えてきている。
・農業は、効率の良い産業ではない。地道な努力と強い意志が必要だ。
 
 
   
 参加者の皆さんは、地域の復興のため、「南三陸で・仲間と・生きる覚悟」を持った熱い農業者の話に、現実の農業を目の当たりにし、大いに刺激を受けたようでした。今回の「つどい」が、農業への決意や農業スタイルの決定、経営計画のヒントになり、就農への道の一助となることを願っています。

 
お問い合わせ先

担い手育成班 :岩渕
 TEL:022-275-9192

 
 
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