「みやぎ農業見聞のつどい・夏」を開催しました

新規就農に必要なのは、「明確なビジョン」と「地域とのつながり」

~新規就農を目指し新規就農希望者ら12名が、先輩農業者を訪問~

 

 去る7月8日(土)に当公社と宮城県、県農業会議、JA宮城中央会の共催による「みやぎ農業見聞のつどい・夏」が開催されました。
 就農を希望する男女12名(男性7名・女性5名)が参加し、先輩農業者のほ場を訪れ、視察研修や意見交換を行いました。参加者は、20代が2名、30代が2名、40代が6名、50代が2名で、今回は、全員が宮城県内からの参加でした。
 開催状況の一部をご紹介しますので、是非、就農ビジョンやイメージの具体化とともに、計画検討の参考として下さい。

   
◎視察園1 加美町 六根舎 田原 雅仁 氏  視察園概要は → こちら
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     「県外から移住。稲作で新規就農!」
 
 「地域おこし協力隊」の隊員(宮城県隊員第1号)として、県外から加美町に移住…独立就農に備え、田を借りようと奔走したが、見つからず。研修3年目の11月にようやく決まった。最初は、信頼が担保できないため、貸してもらえない。とにかく、農地の確保に一番苦労した。地域に入るためには、人付き合いを大切にする必要がある。本気度を地元の人は見ている。
 
 平成25年4月六根舎として独立就農。 1haの条件の良くない水田を借りて、無農薬中心の米作りを始めたが、1年目は、利益が出なかった。組合から農業機械を借り入れるとともに農作業を受託し、農業機械のオペレーターをして収入を確保。また、青年就農給付金の経営開始型(現:農業次世代人材投資資金)を受給。 
 

  
 初期の設備投資は必要最低限。中古機械と営農組合からのリースで対応した。業者と仲良くして情報を得ることも重要。後々のトラブルを避けるため、ただでは借りない。借りる時や譲り受ける時は、安価であっても契約書を作成するなど、書類を残すこと。
 
 天候など予測のつかない事態で生産がおぼつかなくなって、それがストレスとなることも…。他の現金収入の道も考えておく必要がある。
 
 現在は、田2.3ha、畑0.3haと経営地は倍増。 初めて借入れた場所は、計画どおりの収益が上がらず、5年目になって何とか対応できるようになった。今は、計画の60%~70%出来ればOKというような気持ちになった。
 
 特に無農薬の場合、農地を荒らさない努力が必要。除草は良い除草機が出てきた。病気対策は粗植にし、風通しを良くすること。ほ場のくせに合わせることが必要。肥料は有機肥料(鶏糞)を使用している。
 
 ビジョンを持つことが大事。少ない面積でいかに収益をあげられるか考えて、手間を掛けて作る「無農薬」「天日乾燥」のお米を直販している。
 
  販売先は県内中心。距離があると離れやすい。仙台・富谷・泉のお客様が増えていて、距離の結びつきが販売に繋がっている。今後、加工でも収入を増やしていきたい。
 
 就農1、2年目は、働きすぎていて、3年目くらいから調節できるようになった。しかし、現在も田んぼを一番、長く歩いているという自負がある。ほ場にいかに長く居て、細かに観察するかは大事なことだと思う。
 
 稲作は地域あってこそ。最初は、自分のためだったのに、加美に来て7年。現在は、地域の発展と未来を考えるようになった。
 
   
◎ゲスト 大崎市(岩出山) 氏家 直子 氏  視察園概要は → こちら
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   「親とは違う作目で就農。農地を守る!」
 
 家が専業農家で、姉が大学に進学したことから、誰が田畑を守るのか!?と考え、私しかいない…と就農を決心。宮城県農業大学校に入学し、卒業後、園芸総合研究所で1年間研修し、両親(水稲部門6ha)と作目を別(野菜部門)にして就農。
 
 親と違う部門での就農を考え、園芸総合研究所でベリー栽培を学んで、ベリーのハウス5棟+他のハウス野菜で始めた…が、生のベリーは出荷時の傷みや実に入り込む虫の駆除などで手間がかかること、ベリーの収穫時期と他の作目の作業時期が重なることなどで、計画の見直しを余儀なくされた。現在、ベリーは、ドレッシングを作る分だけの栽培。
 
 

 
 大崎市で開催したドレッシングの加工特産品開発セミナーを受講。栽培しているきいちごとドレッシングを組み合わせることを思いつき、試作を重ね、商品化。ラベルも手書きで作成。
 
 ドレッシングはペットボトルの場合、製造許可がいらない。在庫を抱えないように製造している。加工場(ラボ)も床面積をさほど必要としない。
 
 町で美味しいと有名なパン屋さん「ひとつぶ堂」に自ら、ドレッシングを持ち込み営業し、お店に置いてもらえることになり、それからは口コミで広まった。
 ~販路開拓のこの行動力は、見習いたいものです~
 
 トマト栽培のこだわりは、自家製の有機肥料の牛糞の他、カキガラ石灰、ボカシを与え水を切っている。水は葉と土の状況を見て適宜やっている。追肥はしていない。
 
 ミニトマトは甘く、レストランからの注文も入る。販売先は「道の駅」直販がメイン。直販所は年配者の出荷が多く、赤のトマトが多いが、他との差別化を図るため、8色のトマトを組み合わせて販売し好評。
 
 青年農業士として、果菜類栽培から出荷・販売・加工とひとりでこなす他、道の駅、消防団、大学校同窓会、地元自治会の役員を引き受けている。農作業以外で時間が取られる忙しい毎日であるが、地元や地域など、人とのつながりを大事にしている。
 
 親が水稲、私が野菜と部門を分けているが、これから農地をどうやって守っていくか、将来的にどうするか悩みどころ。
 
 新規就農には、やる気と地域とのつながりは不可欠!それを就農者が発信することも必要。そうすれば、まわりは、あたたかく迎えてくれる。 
 
 
◎視察園2 加美町 (株)フラワーパートナーズ 今野 高 氏  視察園概要は → こちら
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  「自分スタイルで雇用を生む農業経営を行う!」
 
 農家の長男に生まれ、農業普及員として県に9年間勤めた後、平成11年4月独立就農。雇用を生む農業をしようと考えて、当初から、自分で価格を決める流通ありきの市場外流通を目指し、作目を花苗、販売先をホームセンターに決めた。
 
 取引先の各店舗と半年前に契約。それに基づいて栽培を行う完全な計画栽培。
 
 種の発芽と土作りは外注し、苗を仕入れる。計画栽培ゆえに届いた苗をどこに何個と細かい指示が出せるため、誰でも作業が出来る体制となっている。肥料を与え、育ってきたら、間隔を開けてトレーに移す。こうした作業は、地面で行わず、高さのある台の上で行うことで、スピードアップし、作業の効率化に繋がっている。
 

 従来の販売方法は、ホームセンターの購入層3割に対して、小さな花苗300円を販売してきた。残り7割の人をターゲットとして、大型の花苗800円を生産・販売している。購入層の衝動買いを誘うよう、大きいものを売る。サイズを変えて需要を作る。…どう作るか…他でやってないものは何か…全てはスタイルにある。
 
 一般的な品種が販売のベースにはあるが、こちらの価格は決まってしまっている。これとは別に他で扱っていないもの、新しい品種…例えば、昨年アメリカで好評だった新品種のひまわり等を扱うことで、価格を自分で自由に設定出来る。緻密な原価計算のもと、価格を設定。販売先にもなぜこの価格なのか説明出来るようにしておく。
 
 事業拡大を実行するときにスピード感を持って動けるように、まだ利用予定のない農地も借りている。実績を作ると周りが貸してくれる。
 
 情報収集には自信あり。情報は動かなければ得られない。また、ビジョンのない人には、お金も人も集まらない!

 

**先輩就農者3人の方のお話に共通することは・・・**
 ★ ビジョンを持って、目標を定め、それを達成するために何が足りないか…
         ~逆算して考えることが必要~
         *** 差別化で自分スタイルの確立 ***
 ★ 地域やまわりとのつながりを大事にすること。農業はひとりでは、できない!
 
**参加した皆さんからは・・・**
 ・就農前に経営計画や事業ポリシーを作り込むことが大事だと思った。
 ・ビジョンを持つことから始まるが、続けるための戦略がより重要と感じた。
 ・どこに価値観を見いだすのかをじっくり考えたい。
 ・地域に根ざすには、地域と関わることが大切なことがわかった。
 ・自分自身が田畑で働いて、その中で、近隣の方から、近隣の情報を得ることが大事。
 
 など、先輩就農者から大いに刺激を受けたようでした。今回の「つどい」が、自分の農業スタイル決定のヒントになって、就農への道の一助となることを願っています。

 
   
お問い合わせ先

担い手育成班 :吉川(よしかわ)
TEL:022-275-9192