理事長からのメッセージ

盛夏の農村、大切な風景と大切な地域

 前線が移動し高気圧に覆われていくように、東日本大震災からの農地復旧前線や草地除染前線がそれぞれ進んで終点に近づこうとしております。年ごとに、がれきや雑草で覆われていた農地で再び稲や大豆が育つようになり、牧場では牛が草を食む、整備された園芸施設で立ち働く姿を目にするにつけ、関係者の復興へのご努力、そして全国からのご支援への感謝を思わずにはいられません。同時に、当公社としても微力ながらその一部でお役に立てていることをうれしく思っています。
その一方で、国際貿易に関する動きやそれと連動する政策等も動きが早いように見えます。TPP及び一昨年来の国の農政改革、米価の動向と米需給政策としての飼料米増産等、地域の農業振興という面からは落ち着かない状況が続いています。
しかし、そうであっても、あるいはそうだからこそ、農業・農村のもつ課題解決への歩みは確実に進めなければならないと考えます。前に踏み出さなければ後ろに流される、立ったまま踏ん張ろうとしてもだめ、そのような急流にいるのが今だといえます。
課題の一つの農地集積ですが、「しっかりとした農業経営者がいて、支える農家もいて、ともに農村の一員として地域づくりを担っていく」といった地域としてのありかたを根底において進めるべきもので、農地中間管理事業はそれを実現するための道具といえます。使うのは市町村であり、地域の皆様です。地域の農地利用がこうあったらいいと描くのが「人・農地プラン」で、そのための農地のリレーを進めるのが農地中間管理事業ということになります。
そして、実際に農地をつなぐ業務は、農地中間管理機構から市町村や農協に委託して進めています。そもそも農業の主役は地域であり、大切な農地の事情に通じているのも地域であって、農地中間管理事業という新しい仕組みにおいても、このことは不変と考えるからです。したがって、農地中間管理機構は、「人・農地プラン」実現のために、県、市町村、農業委員会、農協等が、農地の受け皿である公社と一緒に行う運動体とみるのが最も適切な理解ということになります。
関係機関・団体が一層連携して進めてまいりますので、積極的なご活用をお願いいたします。
稲がすくすくと育ち、大豆の管理、麦の収穫、牧草の収穫作業等があり、夏野菜が実り、花が咲く夏、最も農村らしい季節です。今、この時にまわりを、人・農村景観をあらためて見回していただけたら、きっと残したい風景、地域の将来、自らの経営、等への思いが浮かんでくるでしょう。大切な風景と大切な地域。
穏やかな天候と、豊かな稔り、確かな未来を祈念して。

平成27年7月

                    公益社団法人 みやぎ農業振興公社
理事長 髙橋正道

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